【論文メモ】人間を理解するためのロボティクス

石井加代子 (2007). 人間を理解するためのロボティクス. Cognitive studies 14(1), 11-30, 日本認知科学会 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/14/1/14_1_11/_pdf)

「全ての作業をプログラムす ることは不可能であるから,ロボットが作業を習得 する必要があり,ヒトと同じ形態のロボットのほう が,遠隔操作・教育し易いから」

「人類の進化に大きく貢献したのは,学習する能力では なく,教える能力である」と考えられることから, ⃝1 ロボットはまず,“ 学習する ”のでなく,“ 養育・ 教育される ”必要がある,⃝2 ロボットが他のロボッ トに,情報を単に移転するのではなく,“ 教えるこ とができる ”ようになる必要がある,⃝3 他のロボッ トに“ 教えることができる ”ということを,当該ロ ボットの“ 学習が成立した ”状態の証しとする,⃝4 実用目的の明確な研究でなければならない.(p.14)

→逆強化学習に加えて、ロボットによる教育への発展性について。

【発見的(ヒューリスティク)知識】ヒトは, 現実世界の問題を解決するために,時々刻々必 要な有限個の情報を迅速に選択している.機 械にはこれができない〈フレーム問題〉.ヒト も新規で複雑な状況では,ヒューリスティク な解決が困難になるが,フレーム問題が“ な いかのように振舞い ”,立ち往生しないです ますことはできる.(p.16)

→フレームそのものの選択の仕方と、そのフレームを評価/決定する時間の間に環境が変化してしまうことについてどう解決しようか

①まず養育者が笑いかける.他者を真似するという 生得的デバイスのある赤ん坊は,これを真似る.す ると,行動に誘発された快感を体験する.快感という報酬ゆえに,笑う行動を繰り返すようになる. ② 養育者は,赤ん坊の笑いを「赤ん坊自身の情動の 表現である(例:何かが面白くて笑っている)」か のように,応答する.養育者と赤ん坊の間で,笑い という行為が交わされる.養育者と赤ん坊以外の事 物をめぐって(指差し・掌握・揺り動かしなど)この相互作用が続行する.養育者は,子どもが言葉を 理解する前から,快感や笑いに関する様々な言語表 現を赤ん坊に対して語りかけ,赤ん坊の動きや発声 を,「赤ん坊が言語表現とその意味を理解したかの ように」応答することによって,赤ん坊を言語ゲー ムに引き込んでゆく.他者の表情の知覚(知覚モデ ル)と,自分の情動表現(行動モデル)が緊密な関 係で形成される.
③ 他者の笑う顔をみると,自分の行動モデルの逆モ デルを使って,他者が快いと感じているのだと推測 する(他者の感情理解).言語ゲームを介して,こ れに「笑う」・[面白い]・「楽しい」・「嬉しい」など の言語表現が結合される.
④自分が笑ったとき(行動モデル),他者理解(知 覚モデル)とそれに対する言語表現を利用して,「自 分は楽しくて笑っている」というような自己の感情 理解が成立する. (p.23)

→実験心理学における感情の獲得過程。行動の結果に報酬を与えるだけでなく、行動そのものからも報酬を得る必要がある?

集団の利益を最適化するアルゴリズムは,ある特 定の個人が道徳的「悪をなす」ことを禁ずるもので はなく,多くの人が「道徳的悪をされる」ことを抑制するものである.他者の「悪をされたくない」という心的内容を推測できない,あるいは推測や理
解に基づいて行動制御できないならば,特定個人の 「悪をなす」行為は,自己制御できない.協調行動をシミュレートするロボット集団で,心の理論と倫
理的行動の関係を調べることができるだろう. (p.24)

→「自分がされて嫌なことを他人にしない」が集団の利益最大化のアルゴリズム。禁止項目をリスト化するんじゃダメ。